2011年03月08日
78 ナナハチ

78 ナナハチ 吉田篤弘 著
朝の連続テレビ小説よろしく、毎朝10分程度ずつ読んできた。
いいところで、今日の分はおしまいみたいな。
今朝もそのつもりだった。
p213の区切りのいいところで止めるつもりが、
いつもはやらない、ちょっと先のページを覗いたのが悪かった。
どうしても先を読みたい衝動に駆られて、出掛けに持ち出してしまったのである。
残りページが少なかったのも原因のひとつだろう。
ところが、移動の車内で一気に読み進むにつれて、
期待していた答えからどんどん遠ざかるようなじれったい展開。
左の手に残る厚さは益々心細くなるのに・・・。

「78 ナナハチ」より
私は息をつめてレコードを見た。
誰かが見たらひとコマ漫画のようだったろう。目の前にあるものには数分間にわたる音の連なりが閉じ込められているのに、私にはそれを聴く装置がなく、ただ見つめるより他ない。
いつまで見ていても、もちろん音など聴こえてこないが、それがアーサーから手渡されたものであることが、「音楽のようなものだ。 と思う」と言っていた彼の言葉に少しずつ私を連れ戻した。アーサーから受け取るのは金銭と引き換えに得た古びた物だけではない-あらためて私はそこに思い至った。
-とにかく、聴いてみよう。
それは何らかの方法でこのSPレコードを再生するという意味ではなく、音を聴かずして、音に込められたものだけを聴き取ると言ったらいいか-。・・・

このブルーレイディスクには、今見たくてたまらないライブ映像が収録されているのに、
自分にはこれを見る装置がなく、ただ見つめるより他ない。