2010年11月02日
フランツ・カフカ 『変身』

ある朝、グレゴール・ザムザが不安な夢からふと覚めてみると、ベッドのなかで自分の姿が
一匹の、とてつもなく大きな毒虫に変わってしまっているのに気がついた。固い甲殻の背中を
下にして、仰向けになっていて、ちょっとばかり頭をもたげると、まるくふくらんだ、褐色の、
弓形の固い節で分け目をいれられた腹部が見えた。その腹の盛りあがったところに掛け蒲団が
かろうじて引っかかっているのだが、いまにも滑り落ちてしまいそうだ。昨日までの足の太さ
にくらべると、いまは悲しくなるほど痩せこけて、本数ばかり多くなった足が頼りなく目の前
でひらひらしている。
衝撃的な朝で幕を開ける、このヒューマンドラマ。
翻訳物独特の回りくどい言い回しも、話の展開に引き込まれていく内に気にならなくなっていく。
一体どうなってしまうのか?
この男に救いはあるのか?
中ほどまで読み進め、今後の展開に想像をたくましくし始めた、その時だった。
クライマックスは突然にやって来た!
「なにっ!?」
そこで、はたと気がついた。
この本は、『変身』の他、もうひとつの短編が収められていたのである。
それに気づかず、まだ話半ばだと思って読んでいたのだ。

期待していた展開を大きく裏切る突然のエンディングに、あっけにとられるのであった。
そして、変身したグレゴールの姿を想像しながら、
この結末に隠されたメッセージをまだ考えている・・・。

Posted by kaz at 22:30│Comments(0)
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