2009年08月28日
種差海岸

午後二時二十分、種差海岸に達した。
浜は断崖になっている。墨汁のように真黒な火山灰の土で、浜に接続して海中に地球の骨ともいうべき岩山があり、クリームをたっぷり入れたコーヒー色の岩肌のむこうに濃すぎるほどの海の色があって、ひどくあかるい。この岩山に季節になると海猫があつまってくる。その大群の啼き声が天に満ち海を圧してきこえてくると、この冬も生きてすごせるだろうかという荒涼たる心細さを感じる、と私にいったのは、八戸うまれの友人Yだったが、この海岸の明るい陽光の中に立っていると、とてもそういうことが想像できなかった。むしろどこかの天体から人がきて地球の美しさを教えてやらねばならないはめになったとき、一番にこの種差海岸に案内してやろうとおもったりした。
司馬遼太郎の「街道を行く」は、旅のガイドだった。
どこかへ行こうと思ったとき、その土地をシリーズから探した。
生きたガイドっていったらいいのかなあ・・。
かつてその地で起こった事々、
歴史、人とのふれあい。
どんなトラベルガイドよりも、有意義な旅にしてくれた。
今を去ること18年前、「陸奥のみち」を読んで種差海岸の駅におりた。
小さな無人駅をおりると、海岸まではずっとなだらかな下り坂。
どんどん下っていくと、目の前にまさに群青色の海が広がっている。
足元ははきれいな芝のようなもので覆われ、
見たことのない美しい海岸線がずっと先まで伸びている。
岩をかき分けかき分け海面までたどり着くと、
濃く碧く、それでいてどこまでも澄み渡った海に感動。
どこかの天体から来たわけでもないのに、
初めて地球の美しさに出会ったような旅だった。

Posted by kaz at 23:29│Comments(2)
│旅先にて
この記事へのコメント
種差海岸には初夏のニッコーキスゲが美しい時に行ってみたいとよく思っていました。最近忘れていましたが・・・。
大学4年にハワイに一人旅で行った時、青森出身の神戸外国語大学の学生とハナウマ湾で知り合いになりました。夜飲みながら、種差海岸の猛々しさ、一瞬の美しさをずっと力説されていたのを思い出しました。
旅に行きたくなりますね。では
大学4年にハワイに一人旅で行った時、青森出身の神戸外国語大学の学生とハナウマ湾で知り合いになりました。夜飲みながら、種差海岸の猛々しさ、一瞬の美しさをずっと力説されていたのを思い出しました。
旅に行きたくなりますね。では
Posted by goichi at 2009年08月30日 14:27
goichiさん、こんにちは。
やっぱり地元の人にとっても、あの美しさは自慢なんですね。
よくわかります。
また、そんな話を遠いハワイで聞くなんて言うのも
おつですな。
そういう出会いは、一人旅ならではですね。
ニッコーキスゲの夏ですか。
いいんでしょうねえ。
また、是非訪れてみたいものです。
やっぱり地元の人にとっても、あの美しさは自慢なんですね。
よくわかります。
また、そんな話を遠いハワイで聞くなんて言うのも
おつですな。
そういう出会いは、一人旅ならではですね。
ニッコーキスゲの夏ですか。
いいんでしょうねえ。
また、是非訪れてみたいものです。
Posted by kaz
at 2009年08月30日 18:18
