2011年03月23日
ビートルズ ホワイトアルバム

『フィンガーボウルの話のつづき』 『針がとぶ』 ともに 吉田篤弘 著
両方の話に共通のキーアイテムが、ザ・ビートルズのホワイトアルバムなのである。

「これ、ビートルズの新しいアルバム。すごくいいんだよ。昨日からずっと聴き続けてるけど、ぜんぜん飽きない。もう20回は聴いたね」
彼は「ほら」と、レコードのジャケットを見せてくれた。真っ白な中にビートルズの名前だけが浮き出ていて、右下にゴム印で捺したようなそっけない数字がある。それ以外は本当にただ白いだけの質素なジャケットだった。

表側は、真っ白な中に小さく <THE BEATLES> というタイトルが浮き彫りにされ、その右下に <No.A025036> と番号が打たれてある。
<No.A025036>
それが私の番号なのだった。これまで一度として、自分の<ホワイトアルバム>が何番であるかなど気にかけたこともなかったが、その番号はどうやら全世界で唯一の番号であり、その番号の打たれた<ホワイトアルバム>を所有しているのは世界で私ひとりであるようだった。

「じゃあ、知ってるかしら?<ホワイト・アルバム>って、じつはとってもDJ泣かせなレコードなのよ」
そう言って彼女は、積んであるレコードの中から、白いレコード・ジャケットを探しあて、慣れた手つきで盤をとり出し、わたしに見せてくれた。
「ほら、このレコードって、曲間の溝がほとんどないの。分かる?どこに何の曲が入っているのかすぐには判別出来ないのよ。実際に聴いてみると分かるけれど、曲と曲がほとんどつながっているからなのね」
潔く真っ白なジャケット。
一枚ごとに打たれたシリアルナンバー。
ここから様々なストーリーが生まれてくる。
一枚一枚、ひとりひとりにある物語。

B面の最後。
針がとぶ。
そこに、わたしの聴くことのできない音楽があった。
Posted by kaz at 22:19│Comments(0)
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