2010年03月05日
リュックサックの旅 下
昨日紹介した、古いリュックサック。
じつは、その右のポケットにこんなものが入っていた。
RERA RERA RU.店長、気付いていたかな?
秋田犬の2円切手。
1989年、3%の消費税が導入された時に登場したものだ。
裏には一度封筒に貼ってはがしたような痕跡があるものの、消印はない。
このザックと切手には、こんなドラマがあったと想像される。
頃は今から70年以上前。太平洋戦争に突入しようかという物騒な時代。
信州は飯田に中平さんという若者がいた。
山登りが大好きな、昔かたぎの無口で無骨な男。
先週は恵那山、今週は南木曽岳と、
愛用のリュックサックを背に、ひとり登山を楽しんでいた。
その登山の途中、彼はある女性のグループと出会う。
一緒に山を登りながら、問われるままに会話を交わす中平さん。
そのグループの中に、一際明るく彼に話しかける女性がいた。
瞳のきれいな、笑うと笑窪の出来るかわいい人だった。
彼は一目ぼれをする。
山頂の山小屋に着いたとき、何となくお互いの連絡先を交換することに。
また、手紙でもくださいね、なんて軽い感じで。
そして、翌日山を降りるとそれぞれの帰途に着いた。
何の約束もないまま・・。
その後、中平さんは招集され戦地へ赴くも、無事生還。
やがて、見合いの相手と結婚。
近所の子供たちを集めて保育園を経営しながら、
平凡ながら幸せな日々を過ごす。
時は流れて・・・。
20世紀も終わりに近づく頃。
彼はすでに70に手が届く歳になっている。
保育園も人の手に渡し、生活にも余裕が出来た。
そんなとき、しばらく遠ざかっていた山に、ふと登りたくなった。
納戸から、昔のザックを取り出して南木曽岳を目指すことに。
ようやくたどり着いた山頂には昔のままの山小屋が立っていた。
ふと、彼の頭に半世紀前の記憶が蘇った。
あの時の女性は、今頃どうしているだろうか?
そんなことをぼんやり考えながら、ザックからタバコを出そうとする。
そのとき、手に触れる一枚の紙切れ。
「あっ、あの時の・・」
それは50年前出会った彼女の連絡先が書かれたメモだった。
懐かしさも手伝って、山小屋の夜、思わず彼女に宛てた手紙を書いてみた。
その宛先に、まだ彼女がいるなんて思えない。
とっくにどこかに嫁いでいるにきまっているのに。
手紙に封をして、切手を貼って彼は眠った。
次の朝、山を降りた彼はポストの前で例の手紙を取り出す。
投函しようか?
馬鹿げている。
過去の思い出だ。
そっと切手を剥がし、ザックにしまう。
淡い想いとともに。
そんなドラマがこのリュックサックにはある・・・ かもしれない。
切手は、彼の想いとともに、もとの右のポケットにしまっておくことにした。
現在、ザックに書かれていた住所には、時又保育園がある。
代表者は中平さんではないので売ってしまったのか、貸しているのか。
訪ねていって本当の話を聞きたくなった。
じつは、その右のポケットにこんなものが入っていた。
RERA RERA RU.店長、気付いていたかな?
秋田犬の2円切手。
1989年、3%の消費税が導入された時に登場したものだ。
裏には一度封筒に貼ってはがしたような痕跡があるものの、消印はない。
このザックと切手には、こんなドラマがあったと想像される。
頃は今から70年以上前。太平洋戦争に突入しようかという物騒な時代。
信州は飯田に中平さんという若者がいた。
山登りが大好きな、昔かたぎの無口で無骨な男。
先週は恵那山、今週は南木曽岳と、
愛用のリュックサックを背に、ひとり登山を楽しんでいた。
その登山の途中、彼はある女性のグループと出会う。
一緒に山を登りながら、問われるままに会話を交わす中平さん。
そのグループの中に、一際明るく彼に話しかける女性がいた。
瞳のきれいな、笑うと笑窪の出来るかわいい人だった。
彼は一目ぼれをする。
山頂の山小屋に着いたとき、何となくお互いの連絡先を交換することに。
また、手紙でもくださいね、なんて軽い感じで。
そして、翌日山を降りるとそれぞれの帰途に着いた。
何の約束もないまま・・。
その後、中平さんは招集され戦地へ赴くも、無事生還。
やがて、見合いの相手と結婚。
近所の子供たちを集めて保育園を経営しながら、
平凡ながら幸せな日々を過ごす。
時は流れて・・・。
20世紀も終わりに近づく頃。
彼はすでに70に手が届く歳になっている。
保育園も人の手に渡し、生活にも余裕が出来た。
そんなとき、しばらく遠ざかっていた山に、ふと登りたくなった。
納戸から、昔のザックを取り出して南木曽岳を目指すことに。
ようやくたどり着いた山頂には昔のままの山小屋が立っていた。
ふと、彼の頭に半世紀前の記憶が蘇った。
あの時の女性は、今頃どうしているだろうか?
そんなことをぼんやり考えながら、ザックからタバコを出そうとする。
そのとき、手に触れる一枚の紙切れ。
「あっ、あの時の・・」
それは50年前出会った彼女の連絡先が書かれたメモだった。
懐かしさも手伝って、山小屋の夜、思わず彼女に宛てた手紙を書いてみた。
その宛先に、まだ彼女がいるなんて思えない。
とっくにどこかに嫁いでいるにきまっているのに。
手紙に封をして、切手を貼って彼は眠った。
次の朝、山を降りた彼はポストの前で例の手紙を取り出す。
投函しようか?
馬鹿げている。
過去の思い出だ。
そっと切手を剥がし、ザックにしまう。
淡い想いとともに。
そんなドラマがこのリュックサックにはある・・・ かもしれない。
切手は、彼の想いとともに、もとの右のポケットにしまっておくことにした。
現在、ザックに書かれていた住所には、時又保育園がある。
代表者は中平さんではないので売ってしまったのか、貸しているのか。
訪ねていって本当の話を聞きたくなった。
Posted by kaz at 21:38│Comments(0)
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